今北産業
- HDMI キャプチャーボード的なやつって最低でも 1 万円くらいはするよね、みたいな常識を破壊された。個人的には完全にお値段以上
- ある程度制限や難はあるものの、それを受け入れられるなら驚くほど普通に使えてしまっている
- 音声入力の挙動に難があるのが一番大きそう
このあたりの話題。
似たようなのを 2 台 AliExpress で買って持っている。似たようなのというだけであって、サウンドハウスのそれや Amazon で売られてる似たような商品に以下の話題が当てはまるとは限らないし、この note のエントリで言及されているデバイスについても然り、という感じです。値段がほとんど一緒でスペックがめっちゃ近いように見える、という事実だけがある。以下は自分の手元に届いた物体についての感想。
文脈
これっぽいやつ AliExpress で送料込み 1000 円くらいやん!!!ということに数ヶ月前に気づいていたけど、いまやサウンドハウスで同じくらいの価格で買えるようになってしまった*1。自分が持っているものとはおそらくガワだけが違って、もっとも重要な部分を司るチップは同じものを使っているはず、たぶん……。このころは ATEM mini やその他ちゃんとした HDMI キャプチャーボードの在庫が本当に全部尽きていたこともあり、これを見つけたときにはめちゃくちゃ驚いた記憶がある。
ふとアリエクスプレス眺めてたら HDMI キャプチャとされる物体が 1000 円くらいでけっこう売っててめっちゃびっくりしてる、完全なるゴミが届いたとしてもまあ許容できるラインの価格……https://t.co/5F3smXF2p7
— 民生用カメラ (@polamjag) May 19, 2020
で、届いてからたまに使っている。Splatoon をやるときにプレイ動画を YouTube Live に限定公開で配信して、あとから反省会をするのに使うとか、身内でリーグマッチ (フレンドといっしょにバトルするやつ) をやるときに思い出コンテンツとして残して共有しているとか、広角のアクションカメラをつないでオンライン飲み会の Web カメラ代わりにしてみる、という程度だけど、HDMI キャプチャとしては普通に全力で活用できているといえるのではないか。
AliExpress で 1300 円くらいだった HDMI キャプボ届いた、1080p60 出るというふうに書かれてたけど当然そんなうまい話はないな pic.twitter.com/E6RBSiX57c
— 民生用カメラ (@polamjag) June 23, 2020
数ヶ月 OBS などから触っている限り、だいたいこういう感じである:
映像
- 1080p30 / 720p60 が限界
- 1080p60 はできない
- 画質はそんな悪くないと思う (個人の感想)。1000 円という価格を考えると全く文句はない
- 一眼カメラなりを繋ぐときは 60fps で録画する設定に切り替えないと認識されないということがあった
- macOS + Zoom だと「HDを有効にする」設定をオンにしないとアスペクト比がおかしくなることがある気がする
- (4:3 に縮められてしまう)
- これも何が悪いのかはよくわかってない
- 遅延はそれなり
- 手元だと Splatoon をキャプボ越しにやるのは相当無理がありそう (ラグで酔いそうになる)、というレベル
ラグはデータで示せるなと思ったので適当に測ってみた。
これの元動画から適当に一コマ撮ってみたところこういう感じであった。だいたい 100ms 前後くらいのレイテンシがありそう、という感じ。
こういう感じッス
これは 720p60 でキャプチャし、OBS から 1080p60 として YouTube Live に配信したやつのアーカイブ *2。後述するがこのデバイスのオーディオ入力部分は狂ってるので別のデバイスでキャプチャしている。
音
最初に言及した note のエントリでも、音声が強制的にモノラルになるという話で、実際 Windows や macOS で使うとそういうふうに見えるし聞こえる。が、これはメインのチップの実装が狂ってるのでそう聞こえている、という話のようである。
音が取れないの完全に勘違いでした、なぜかモノラル限定っぽい感じがしているけど一応とれる (モノラルであることを伝えるために無駄にカメラ回したりしているつもり) pic.twitter.com/cbVeJikgek
— 民生用カメラ (@polamjag) June 23, 2020
USB のデバイス情報を見つつググってみたところ、MacroSilicon という会社の MS2109 というチップが HDMI 信号を UVC に変換するのを司っているようだ。
が、そのチップの音声に関する実装がおかしくて、48kHz なステレオを、片方のチャンネルのビットをひっくり返した上で 96kHz モノラルにガッチャンコした形で送ってきていて (???)、USB Audio Class としてのデバイスも 96kHz モノラルであると主張している、という妙ちくりんな感じになっている。Linux にはつい最近 quirk (特別対応) が入っており、最新に近いカーネルであれば正しく 48kHz ステレオ入力として扱えそうな感じ。その他の OS は……まあ……
ええ……
— 民生用カメラ (@polamjag) August 23, 2020
> These devices claim to be 96kHz mono, but actually are 48kHz stereo with swapped channels and unaligned transfers.https://t.co/XZlkpA5r9K
ホンマかいなという気持ちで、macOS で適当なカメラを繋いだうえで音声だけ 96kHz で録音してみるとこんな感じであった。たしかにどう見てもそういう感じのスペクトログラムになっている (ログスケールになってたりして見にくいけど、24kHz 部分を中心とした線対称のようになっている)。
ほとんどの動画配信サイトやビデオ通話では、たいてい音声のサンプリングレートの上限はせいぜい 48kHz とかになっているだろうし、エンコードされる際に人間の可聴域に合わせてばっさりローパスフィルタをかけられてしまうことも多いと思うので、実質的な挙動としてはステレオのうち片方のチャンネルだけが使われるモノラルであると言える。左右のチャンネルがミックスダウンされたモノラルではないことに留意する必要はありそう。Linux 以外の環境だと頑張るとステレオの信号がゲットできそう、という世界観。
というわけで、音声入力には難がある。あるのだけど、自分の手元には USB オーディオインターフェイスがいくつか転がっていたのであまり困らなかった…………。Web カメラ代わりにしたいパターンだと、マイクはたいていイヤホンとかについてるやつを使うであろうから意外とあまり困らないのではないかという気もする。ゲーム実況とかをしたいときは頑張ってほしい!!
GitHub で MS2109
で検索してみたところ、Windows 上でこのデバイスのオーディオ入力をキャプチャして、別デバイスに正しいステレオ音声を出力することができそうなユーティリティを作っている人がいた (試してない)。世界は広い。試してる方は結構いそうで、予想通りループバックデバイスを介したりすることで OBS にステレオ音声を取り込んだりできそう、という感じであった。
音声がモノラルになる件、暫定解決できた。ここで紹介されてたmono-to-stereoを試してみた | 最近よく見る 1000 円くらいの HDMI キャプチャーカードについてのメモ - polamjaggy https://t.co/A9PpVSOuMi
— ponde (@mkaneda) 2020年9月26日
macOS でも Audio Unit のプラグインみたいな形でなら自分でも頑張れば実装できるのではないかという気もする。
閑話休題、IPMI もどきのパーツとして使うとか、普段はディスプレイなしで運用してる自宅サーバのコンソールをちょっとノーパソに表示するのに使う、というのをやっている人たちがいておもしろい。たしかにサーバのコンソール出すのにノートパソコンの画面を使えればどれだけ楽だろうと思ったことはあるけど、これは思いつかなかった……。
というわけで、トータルではめっちゃ安くていい買い物だった、そして絶妙におかしな挙動で心をくすぐってくるのがむしろ愛おしくすらある、という感じです。2 台買ったのは、別に挙動が怪しかったからとかいうわけではなく、カメラを複数台使うライブ配信とかをこれでやれればおもろいかなと思ったからなんだけど、買って満足してしまっていて良くないですね、こちらからは以上です。
追記
最近良く見る 1000 円くらいの HDMI キャプチャーカードについてのメモ - polamjaggyb.hatena.ne.jpこれスマホでも使える。ホストケーブルで接続してUVCアプリ入れると普通にキャプチャー可能。
2020/09/10 20:07
たしかにこういうことをやっている人がいるのを Twitter でも見た気がしていたんですが忘れていました。そのときは iOS + iPadOS どっぷりなので関係ないんだよなと思った気もするけど、よくよく考えると Android スマホも OTP ケーブルも手元にあるやんけという事に気づいたので、Play Store で適当なアプリを入れて試してみたところ、面白くないくらいスッと認識されて普通に使えてしまった。